親の借金を相続放棄すべきケースとその方法
1 近親者の経済状況が分からないことは珍しくない
現代では親子が同じ家に、あるいは近所に住まわず没交渉のまま生活している家族も少なくありません。
日常的な付き合いがない場合には、親族であってもどれぐらいの財産があるか、借金はあるかといった様子をその暮らしぶりから推し量ることは難しいでしょう。
まして何年も実家に帰省していないとか、そもそも両親が離婚していて片方の親とは疎遠であるとかの事情がある場合には、その経済状況についてまるで情報のないことも珍しくないと思われます。
2 こんな時には相続放棄を検討
そのように親族に対しての情報がまるでない場合でも、相続が発生すれば法律や遺言により相続の当事者となることはあり得ます。
うかつに相続財産に含まれる預金を引き出そうとするなど、故人の財産を自分のものにするような行動に出ますと、単純承認といい故人の財産も借金も全部引き継ぐことが法的に確定してしまいます。
その後で多額の借金があったことが判明しても、基本的には逃れることはできません。
ですから、交際の薄い親族についての相続当事者になった際には、第一に故人に債務があったかを重点的に調べることが必要です。
ですが、故人の財産はともかく、借金は形のない存在ですから、探すには工夫が必要です。
一番容易なのは、故人の形見分けや後片付けも兼ねて、その自宅に残された書類や郵便物を整理するときに借金に関係しそうな文書がないか調べることでしょう。
近年では借り入れの際インターネットで手続きが完結することも多く、契約書のようなまさに借金の存在に直結する紙はないこともあります(そして故人のパソコンやスマホのデータを覗いて調査することは一般には困難でしょう)。
ですが返済が滞るなどの異常事態が生じた場合には昔も今も督促状や裁判所の呼出状が送り付けられることが常ですから、特に最近の郵便については念入りに調べるべきです。
念を入れて調べたい場合には、故人に代わり信用情報を調査することも可能です。
しかしそのためには、照会先の信用情報機関に対して自分が法定相続人等の利害関係者であることを示すため、多量の書類を準備しないといけないことがあります。
それらの書類の準備や照会後の回答待ちにはそれなりの時間がかかりますので、うかうかしていると相続放棄のできる期間(相続開始またはそれを知った時から3か月)を経過してしまうこともあり得ます。
この手段を取る場合には時間を無駄にせず手続きを進めねばなりません。
これらの他には、故人の財産状況についてよく知っている人に情報提供を求めることも考えられます。
病院や老人ホームに入っていた場合は施設の担当者がある程度情報を持っていることがありますし、故人が事業をしていたのであれば多くの場合税理士に財産管理を委ねていると想定できます。
また故人が生前成年後見人のような法定代理人を付けていた場合には、基本的にその方が故人の財産管理を担っていたと思われますから、相続人の立場で報告を求めるのがよいでしょう。
こうした情報収集により察知した借金の規模が、不動産登記などの公開情報と組み合わせて見積もられる相続財産の規模を明らかに上回ると思われる場合には、迷わず相続放棄を選ぶべきですし、プラスマイナスがはっきりしない場合には、後日新たに請求がなされるかもしれないリスクを踏まえ、そのリスクを受け入れてなお相続する十分な利益が見込まれるかよく検討のうえでどうするかを決めることが必要となります。
3 限定承認という方法もある
相続法には、相続財産と借金のどちらが多いかわからないときのために、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ限定承認という方法もあります。
ですが、相続放棄と同じく3か月以内に裁判所に申し出ることが必要で、かつ、相続人が複数いる場合には全員の同意が必要であるという縛りがあり、しかも相続財産の査定にはかなりの手間と労力がかかり非専門家だけでは完遂困難とも言われています。
さらに税制面でもお不利な点が存在することから、これが最善の選択になるとは限りません。
相続放棄をするかどうか、限定承認をするかといったことについては、調べた限りの資料を持ち、しかるべき専門家に相談したうえで選択することをおすすめします。



























