相続放棄する場合の故人の通帳の管理
1 決して預金を使用しない
相続放棄をお考えの場合は、故人の通帳を使用して預金を引き出すことは決してやってはいけません。
相続人が相続財産の一部でも処分した場合には、民法921条の定めにより単純承認したとみなされ、以降相続放棄をすることもできませんし、先に相続放棄の手続を取っていたとしても効果を有さなくなってしまいます。
口座の名義を故人から自分や他の相続人に変更することも同様です。
万一、知らずに引き出しをしてしまっていた場合には、すぐに元の口座に戻すか、さもなくば引き出し額に相当する現金を自分の財産と
混ざらないように分離して保管し、相続放棄申述をした家庭裁判所に処分の意図がなかった旨釈明する必要があると考えられます。
相続開始後、口座開設先の金融機関に名義人死亡を伝えれば、その金融機関は通常当該預金の相続関係が明らかになるまでは(例えば、有効な遺言書や遺産分割協議書が示されるまでは)口座を凍結し通帳やキャッシュカードを使用不能にする措置を取りますので、自分の不注意や事情を知らない家人による引き出しがされないよう、予め一報しておくのもよいでしょう。
2 相続放棄後も一定期間管理は継続する
相続放棄をした場合は、ご自身は故人の預金と利害関係がなくなることになりますが、他に当該預金を取得し管理する必要がある人がいる場合には、通帳を廃棄などしてしまうと預金のある金融機関・支店名・連絡先等の把握に支障が出る等、迷惑をかけることになります。
そのため、民法904条1項は相続放棄後の相続人に別の相続人か裁判所の任命する相続財産清算人に相続財産に属する財産(通帳そのものが財産かどうかは評価が難しいですが、少なくとも財産に関連する書面として義務が及ぶと考える余地はあります)を保存する義務を課しています。
ご自身以外に相続の意思がある相続人がいる場合には、通帳はその方に渡し、そうでない場合には相続財産清算人の任命される可能性がある期間中は破損・汚損しないよう保管しておくのがよいでしょう。
相続財産清算人は、法定相続人が全員相続放棄をしてしまった場合に利害関係のある人(債権者等)が相続財産の分配その他の処理をしてもらうため裁判所に申し立てたとき任命されることになりますが、申立時に相当額の費用を要することや、申立に期間制限がないこともあり、いつまで経っても任命されないということも考えられます。
現実的には、故人に対する債権者の権利が消滅時効を迎える5~20年の間保管を継続する必要はあると言えます。
それ以降は相続財産清算人が任命される可能性は大きく減少するためです。
不安が残るようであれば弁護士への相談をご検討ください。



























